育児介護休業法が改正され、2023年4月1日から育休取得率の公表が義務化されます。
改正された育児介護休業法は段階的に施行されており、直近だと2022年10月から産後パパ育休が新たに始まるなど男性の育児参加がより推進されています。
今回はこの育休取得率の公表義務化で、働く人にとって参考になるありがたい情報になるかもしれないので、その際のポイントになりそうな点を被雇用者目線で備忘録に残していきます。
育休取得率の公表義務化とは?
厚生労働省によると育休取得率の公表義務化とは具体的に、
- 常時雇用*する労働者数が1,000人超の事業主を対象に毎年1回
- 以下の①または②の割合の数字・①と②どちらの数字なのか・算出期間を
- 一般の方が閲覧できるように自社サイトや両立支援のひろばなどで公開
とあります。
各企業が定めている育児を目的とした休暇制度も対象になる場合がありますし、産後パパ育休もカウントに含まれます。
①と②を噛み砕くと、子どもが生まれた男性社員のうちどのくらいの割合が育児休業(またはそれに該当する制度)を取得したかということです。
①育児休業等の取得割合
公表直前の事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数、
のうち、
公表直前の公表前事業年度においてその雇用する 男性労働者が育児休業等をしたものの数
②育児休業等と育児目的休暇の取得割合
公表直前の公表前事業年度において、事業主が雇用する男性労働者であって、配偶者が出産したものの数
のうち、
公表直前の公表前事業年度においてその雇用する男性労働者が育児休業等をしたものの数及び小学校就学の始期に達するまでの子を養育する男性労働者を雇用する事業主が講ずる育児を目的とした休暇制度を利用したものの数の合計数
*雇用契約の形態を問わず、事実上期間の定めなく雇用されている労働者。
厚生労働省HPより引用:https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000851662.pdf
これによって働く側としても、各企業の男性育休の取得状況が見れるようになります。
このような数字は企業の一つの魅力としてアピールされたり、就職・転職サイトの条件検索などに追加されたりすることになるのでしょうか。
公表の義務化は1000人以上の企業のみ
常時雇用者数が1000人以上の企業のみが義務化の対象なので、企業数だけで考えると中小企業をはじめとするほとんどの企業は義務化されないことになります。
なお義務化されないものの、もちろん従業員1000以下でも公表は可能のようです。
参考:https://www.net-bizs.jp/dataguide/15406/
公表されたときに考えるべき4つのポイント
数字は加工の仕方や見方次第でどのようにも見えるので、いくつか情報を見る上でポイントになりそうな点を残しておきます。
1, 育休の取得期間はどうか?
育休を取得した人の割合なので、数日取得した人も6ヶ月取得した人も同じ1としてカウントされます。したがって育休取得率が高い=好きなだけ育休取れそう!というわけではないかもしれません。
育休を取得した人がどのくらいの期間で育休取得をしたのか、1日〜2週間、2週間〜1ヶ月、1ヶ月〜3ヶ月などと期間別に取得者数が公表されているとより参考になりそうです。
ちなみに厚生労働省の調査によると、2021年度で育休を取得した男性のうち、5割は2週間未満の取得でした。
実際に自分が取りたい期間を取得できている人がどのくらいいるのか数字を見れるとより助かりそうです。
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/03.pdf
2, 比較対象はどうか?
とある企業の取得率が15%だと分かった時に、この数字は高いのか低いのかなど、どう解釈するべきか迷います。
この場合だと例えば同業他社の取得率や従業員1,000人以上の企業の平均取得率などと一緒に見てみるとよりわかりやすいかもしれません。
ちなみに厚生労働省の調査によると、2021年度の育児休業取得率は13.97%*だったとのことです。
*事業所調査(常用労働者5人以上):調査対象数 6,300 事業所(有効回答数 3,683 事業所、有効回答率 58.5%)
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r03/03.pdf
3, トレンドはどうか?
ある企業の2021年度の育休取得率が30%で、平均の13.97%を大幅に超えていると分かった場合でも、実は前年の取得率の方が高く50%だったかもしれません。
前年度に比べて取得率が大幅に落ちたなど傾向を見ることで、その数字の見方がより具体的になるかもしれません。
育児休業取得率であれば、その企業内で過去数年分でどのように数字が推移しているか、またそれが同業他社や対象企業全体の推移と比較してどうか見れたら、よりよい理解につながりそうです。
4, 取得した人の社員属性に偏りは?
その企業で育休を取得した人の割合と数が分かったあとに、例えばどの役職の人がどのくらい取得していたのか、どの部署の人が取得していたか、1人目育児の人がどのくらい取得したかなど、もう1段階深く知れたら面白そうです。
例えば管理職も積極的に育児休業を取得していたという情報がわかれば、上司に育児休業を相談しやすい環境である可能性があるかもしれません。
また大きい会社になると部署ごとに雰囲気が全く異なることがあります。ある事業部では部署全体が育休取得推進をリードしているから育休を取得しやすい一方、ある事業部では取りづらいといったことがわかるかもしれません。
まとめ
以上のように育休の取得率が公表され始めるのは働く側にとっても参考になるありがたい情報になるかと思います。
情報を受け取る側としてはその情報を有効活用するために少し深掘りしたり、比較検討したりするとより良いかもしれません。
また下記2つに関して分かれば、よりわかりやすい情報になる可能性がありそうなので挙げておきます。
希望した育休と実際の育休のギャップ
育休を取得した人とその配偶者にアンケートを取って、
夫婦としての元々の希望期間はどのくらいだったのか、その希望通り育休取得できたか、
また終わってみて育休期間は十分だったのかなど、当初の予定と実際の状況を比較するような点で定量的にまとめた情報があるとさらに状況を把握しやすいかもしれません。
育休終了後の育児状況
育休を取得できたからOKというわけではなく、育休終了後も育児は続きます。
したがって復職の際の体験談、復職後のサポート体制、復職後の勤続年数、その後の育児関与に関するデータなどが併せてわかれば、その会社の事情がよりわかるようになるかもしれません。
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